第3章 伯爵家の令嬢×兄の友人
シェリーの視線に気づいたロンバードが振り返ると、彼を紹介した。
「彼は私の友人のレオンだ。今日から冬休みの間はうちで過ごしてもらうことになっている」
兄の友人――
その響きにシェリーはドクンと胸を高鳴らせた。
まさか、彼が…?
「って、え? 冬休みの間…うちでお過ごしになる?」
「あぁ。事前に父上には説明済みだが聞いていないのかい?」
聞いていない、と叫びたかった。
しかし、素敵な『兄の友人』の手前、はしたないことはできない。
「この玄関ホールはお冷えになります。挨拶は中でいかがでしょうか」
執事に促され、シェリーは混乱したまま応接間へと向かった。
***
「そういうわけで、冬休みの学園の課題が連名作業だからね。うちでやろうってなったわけさ」
ロンバードの説明に、シェリーは目をぱちぱちさせる。
泊まり込みで冬休みの課題をやるというのだ。
こんな年頃の娘がいるのに、両親はどうかしているのか!
…というのが一般的な貴族のご令嬢が思うことだろう。
しかし、シェリーは違った。
すっかりレオンに見とれており、たった数日とはいえ、ひとつ屋根の下で過ごせることに心浮かれていた。
レオンは黒いストレートの髪に、切れ長の瞳をしていた。その深い海のような蒼い瞳と目が合うと、不意に胸が高鳴る。
だが、レオンはロンバードや両親と話すばかりで、シェリーのことは眼中に無い様子だった。
シェリーは思わず心の中で首を傾げる。
あれ?
今回のストーリーのお相手はこの方じゃないの?
せっかくのイケメンなのに…違うなら残念だわ。
シェリーが勝手に落ち込んでいるなんて、誰も気づくことは無かった。