第3章 伯爵家の令嬢×兄の友人
「さぁ、終わりましたよ。シェリー様」
声をかけられ、シェリーはゆっくりと瞼を持ち上げる。
目の前には姿見があり、その鏡に写っているのは綺麗にお化粧をされ、ドレスアップした自分だった。
さすが、伯爵家の令嬢ね。
シェリーは状況を把握して鏡に写った自分に見とれる。
綺麗なドレスに、決して派手ではないアクセサリー。
華美ではないが、上品さを兼ね備えた装いに大変満足した。
「そろそろロンバード様が学園からお戻りになります。お迎えに上がりましょう」
シェリーにとっては見慣れないが、昔から世話をしてくれているであろう侍女に促され、部屋を出る。
ロンバードはシェリーの3つ上の兄だ。昨年から国立学園に入学している。
前回帰ってきたのは夏休みだったが、今日から冬休みとのことで久しぶりに屋敷に戻ってくる予定だ。
玄関フロアには仲睦まじい父と母がいた。
二人もロンバードの帰りが待ち遠しいと見える。
「あら、シェリー。いつもに増して可愛いわね。さすが私の娘だわ」
「お母様、ありがとうございます。少しでも大人っぽくなったところをお兄様に見ていただきたくて、張り切ってしまいました」
ちょっと照れたように微笑めば、両親は大変満足そうに頷いていた。
すると―――
「ロンバード様、ご帰宅なされました」
執事の声がして、ドアの方を向く。
ゆっくり開けられたドアから外の冷気が流れこみ、一瞬でフロアを冷やしてゆく。
それでも表情を変えず、姿を見せた兄ロンバードに、シェリーは思わず飛びついていた。
「お兄様! おかえりなさいませ!」
「ははっ。少しは大人っぽくなったかと思ったが、まだまだ子供だな」
ロンバードに抱きしめられ、シェリーはぷくっと頬を膨らませる。
しまった、作成失敗だ。
開口一番、綺麗になったね、と言わせたかったのに。
「こらこら、シェリーはいくつになっても甘えん坊なんだから」
母にたしなめられ、シェリーはしぶしぶロンバードから離れる。
すると、兄の後ろに見慣れぬ人がいた―――