第8章 私のストーリー
「再度問ウ。愛シ合ウ者デ間違イナイカ」
愛し合う者…?
カップルかと聞いているのだろうか?
シェリーはじーっと獣を見つめる。
カップルだったらどんなにいいか。
家族として愛し合う者で間違いないが、きっとこの獣が言いたいのはそうじゃないだろう。
「ちが―」
「間違いない」
…え?
驚いてシルフォードを見上げる。
だが、彼は獣を真っ直ぐ見つめていた。
思わず胸がドキドキしてしまったのはしょうがないだろう。
しかも先程まで感じていたドキドキとは違うものだ。
私たち、カップルに見えるのかな…?
そう思うとまたしてもドキドキして浮かれてしまいそうだった。
「デハ、最後ノ試練ヲ与エン…」
そう呟いた獣に誘導されたのは小部屋のような…ドアの付いた大きなボックスがいくつも置かれた場所だった。
相変わらず薄暗いが近くのボックスをよく見れば、ドアには血文字で『試練中』と書かれている。
さっぱり意味不明だ。
そして獣に言われるがまま、ひとつのボックスへ通される。
中は狭く、両腕を横に伸ばすとギリギリ届かないくらいだ。
高さは思ったよりあり、背の高いシルフォードでも余裕がある。
「ここで何を…」
獣に問いかけようとした瞬間、ガチャっと音がして慌てて振り向く。
「えっ…開かない!?」
ドアに鍵が掛けられていた。
どんなに押しても引いても開きそうにない。
シルフォードと二人、狭い場所に閉じ込められてしまったのだ。
「お、お兄様…どうしましょう」
この空間を照らしているのは頭上にある紫色の魔法石だけだった。
不穏な雰囲気が漂い、シェリーはまたしても恐怖で震える。
「シェリー、これを見るんだ。あの獣は試練と言っていたが」
促され、シェリーは顔をあげる。
そこには一枚の紙が貼られていた。
薄暗くて読みにくいが、こう書かれている。
『愛し合う二人が天の星を掴む時、新たな道が輝くだろう』