第8章 私のストーリー
「ふぅ……」
シェリーは手にしたペンを置く。
手元にあるのはあの魔法書だ。
おそらく黒いフードの女の人はシェリーと兄がこういう関係にある事を察していたのだろう。
そしてその事を書き記すようにアドバイスくれたのだ。
だが、シェリーは頭を抱える。
シェリーとシルフォードは兄妹だ。
そのため、最後まではしていない。
なんなら毎晩シェリーだけが気持ちよくなっているだけだ。
シェリーがそれを魔法書に書けば他の人も読むことになるのだろう。そして、実際に読んでどう思うか?
他の人が書いたストーリーはどれも愛し愛され、蜜壷の奥を激しく突き上げられていた。
愛し合う二人が互いに気持ちよくなっていたのだ。
シェリーも基本的にハッピーエンドが好きなため、その内容に大変満足している。
そして、今のシェリーの状況を書き記しても満足する人は少ないのではと思う。
「いや、他の人がどうとかじゃない…」
シェリーは小さく首を振る。
魔法書へのネタ探しの様な言い方をしてもダメだ。
シェリーは最近ずっと思っていた事がある。
兄に抱かれたい。最後までシて欲しい――と。
そんなのは無理だってわかっている。
兄と妹が結婚することは稀にある。だが、本当に事例は少ない。おそらく、両親はシェリーがどこかの貴族へ嫁ぐことを望んでいるだろう。
シェリーはその両親の考えに応える義務がある。
それなのに、シェリーはシルフォードを見るだけで胸がキュンと疼き、夜の密かな行為に幸せを感じていた。そして、部屋を後にする後ろ姿をこっそり見つめれば、今度は切なくて胸が痛むのだ。
「まるで…恋してるみたい……」
ポソっと呟く。
元彼と一緒にいた時はこんなに相手を恋しく思ったことはない。
好きだと思っていたが、違ったのだろうか?
結婚適齢期でできた恋人と結婚出来ると浮かれていただけだったのだろうか。
答えが出ないまま、シェリーはまた夜を迎えるのだった――