第2章 パン屋の娘×幼馴染(貴族)
庶民の、ただのパン屋の娘では一生縁がなかったであろう飲食店にシェリーは来ていた。
予約していないと入れないお店のため、特に待つことなく席へ案内される。
白を基調としたお店で、半個室になっているため、他の客はよく見えない。
そのため、他の人の目を気にせず楽しめそうだ。
「素敵なお店ね」
「あぁ。予約取るの大変だったからね」
「そうなんだ。私のために、嬉しい…ハウロ」
素直に喜びを伝えれば、ハウロも嬉しそうに微笑む。
その笑顔にまたしても胸がキュンとしてしまった。
その後、食事が運ばれてきて、会話はますます盛り上がる。
「それで、うちの親父が店を建て替えてやる!って騒ぎ出して」
「あら、とっても豪快なのね」
ハウロの気取らない話はとても面白くて居心地が良い。
楽しい話を何度もしてくれるし
「うん。美味しいね。でも、パンはシェリーのお店のが1番だけどね」
そうこっそり教えてくれるイタズラな笑顔も好きだ。
好きすぎて、幸せすぎてどうにかなってしまいそうだ。
ちょっとだけお酒を飲み、デザートを味わったところで店を出る。
この後はどうするのだろうとハウロを見上げると、彼は先程よりも頬を染めていた。
「…あのさ、もし、シェリーが良ければなんだけど…。この後はシェローパフュームに行かないか?」
「えっ…」
シェローパフューム
それは、カップルがイチャイチャするための休憩宿だ。
シェリーはぼっと顔を真っ赤にする。
「い、嫌ならいいんだ。で、でも…今日のシェリーのワンピース…それってそういう意味だよね…?期待していいんだよね?」
ピンク色のワンピース
シェリーは知らなかったが、ヒロインが意図して着てきたものだ。
下町で流行っているワンピース。それは『私を好きにして』という意味が込められている。