第8章 私のストーリー
お兄様が?
一体こんな時間に何の用かしら?
起きて尋ねようかと思ったが、流れにまかせ、寝たフリを続けるという指示が脳裏に蘇った。
どうしようかと考えているうちに、かけていたシーツが剥ぎ取られる。そしてベッドが僅かに沈み、シルフォードが乗ってきたのだと理解した。
このままだとどうなってしまうのだろうか。
多少の不安があったが、シェリーは女に言われたとおり、流れにまかせることにした。
ギシッと小さな音がして、オイルランタンの影ができる。
すると、不意に頬に触れられ、シェリーは危うく反応してしまいそうだった。
このまま…動いてはダメ……
シェリーはそう自分に言い聞かせると、耳元で声がした。
「今夜もたっぷり可愛がってあげるね、シェリー」
熱のこもった吐息混じりの声。
ゾクッとした。
一瞬で身体が熱を持ったようで、シェリーは混乱する。
今夜…も?
訳がわからないままでいると、今度はシルフォードの親指が唇をなぞる。
「さぁ、口を開けて舌を出すんだ。シェリーの大好きなキスだよ」
キス?
そう思ったのは一瞬で、気がつけは唇を熱いものが撫でていた。驚きつつも、さすがにキスの経験があるシェリーは唇が舐められているのだと脳裏で理解する。
すぐに唇が重なり、舌が口内へ侵入すると、歯列をなぞるように舐められ、空気を求めるように自然と唇が開いていた。
「いつもの様に舌を絡ませて、シェリー」
いつもの様に…!?
まさか、お兄様は何度もこのようなことを…!?
シェリーは更に混乱した。
しかし、もしいつもシェリーが寝ている時にキスをされており、舌を絡ませて反応していたとしたら、今夜だけ反応しないのは怪しまれてしまうかもしれない。
シェリーは恐る恐る舌を出し、実の兄であるシルフォードと舌を絡ませていた――