第8章 私のストーリー
「他の人が書いたストーリーを読むには、貴女のオリジナルを書く事が必要よ」
「私のオリジナル…?」
「えぇ。ちゃんと書いてくれたら反映されるわ。それに、新しい読み手のオリジナルストーリーも反映されるようになっているの」
話を聞いてドキドキした。
私以外にも複数人の読み手がおり、彼女らが追加したストーリーやオリジナルストーリーを読むことができるのだという。
「ただ読むだけじゃ、ちょっとズルいじゃない? だから、他にも読みたければオリジナルを書くのが義務ってことにしてあるの」
「こ、この魔法書は今何人がお持ちなんですか…?」
声が裏返りそうなのを抑え、シェリーは女の回答を待つ。
「うーん、そうねぇ。確か、貴女の他に20人くらいかしら。これからも才能がありそうな人にはドンドン渡していくつもりよ。まぁ、これは私の趣味だから続く限りね。もちろん、今後書き記される内容も反映されるわ。オリジナルを書けばだけど」
「魔法書って…すごいですね」
複数人の女の人の体験や妄想が詰め込まれているのだ。
今は薄い魔法書だが、オリジナルを書けばもしかしたらページ数が増えるかもしれない。
「現在進行形で追加されているオリジナルには純愛からSM、禁断の恋…なんて種類は様々ね。読んでいて本当に興奮するものばかりよ」
ごくり、と唾を飲む。読みたくてしょうがない…でも…
「オリジナル…書きます。でも、どうしたらいいかわからなくて」
「あら、何を言ってるの? 貴女には十分素質があるわ。だから魔法書を渡したんだもの」
えっ?
きょとん、としたシェリーに女は続ける。
「じゃぁ、とっておきのアドバイスよ。今夜は何があっても魔法書は開かず、寝たフリをしなさい」
「…寝たフリ?」
「えぇ。流れに身を任せるのよ。ただし、起きてはいけないわ。そしたらなんでアソコが毎日濡れてるのかわかっちゃうかもね」
「……っ!」
話していないことまで知られている。
女は魔女なんだろうか……。
それにしても寝たフリとは一体……?