第8章 私のストーリー
「図書室か。なら俺も一緒に行こう」
「えっ、お兄様はお忙しいのでは…!?」
「大丈夫。勉強はどこでもできるからね。今はシェリーが倒れないか心配だから」
もし何かあったときにすぐ対応できるように傍にいたい。そう言ってくれる兄はシェリーを甘やかしすぎだ。
「父上と母上も心配していた。シェリーに付いていてほしいとたのまれてね」
「もぅ…私は子供ではないのに」
「シェリーはいつまでも俺たちの可愛い子ってことだよ。それじゃぁ行こうか」
シルフォードに促され、気がつけば二人で図書室に行くことが決定していた。
シェリーは目的の本を手にすると黙々と読み始める。目の前ではシルフォードが勉強をしていた。
チラッと本から視線をあげ、兄を盗み見する。
美しい銀糸のようなストレートな髪。碧眼の瞳も銀色のまつ毛で縁取られている。
スラっとした高い鼻に、薄い唇。
よく見るとお兄様って美形よね……。
シェリーはなんだかドキドキしていた。
よく考えたらシェリーの家族は皆美しい。
とはいえ、幼い頃からずーっと一緒にいるのだ。見慣れたと言ってもいい。
それなのに……なんでドキドキするの?
シェリーは本に視線を戻す。
しかし内容は全く入ってこなかった。
耳まで真っ赤にしながら本を読むシェリー。
シェリーは一人動揺しており、
そんなシェリーに熱い視線を送るシルフォードに気づくことはなかった――