第8章 私のストーリー
夕方になると少し冷えてきたため、二人は部屋へと戻ることにした。
シルフォードは爵位を継ぐため、現在猛勉強中で忙しい身である。そんな兄に申し訳なかったが、ゆっくり寝れたシェリーはただ今とても元気である。
そして、例の魔法書とにらめっこしていた。
シェリーが開いているのは最終ページ。真っ白なページだ。
この魔法書をシェリーにくれた女は言った。『満足したら最終ページにあなたの体験談か妄想小説を書いてほしい』と。
「私の体験談なんて何もない…。でも、妄想小説なんて思いつかないし…」
シェリーはうーんと頭を悩ませる。
人の作ったストーリーに追記していくのは簡単だった。妄想が止まらないくらいだ。
それなのに、自分でいちから書き始めようとすると、何も思いつかないのだ。
きっと何も体験してない人向けに妄想という逃げ道を作ってくれているのだろうけど、それすらできないとどうしたらいいのやら…。
結局その日は何も思いつかないまま、『兄の友人』にストーリーを追加し、夜を迎えることにした。
シェリーの妄想で追加したストーリーはこうだった―
『兄の友人』のレオンとは毎週末にデートをし、その日は彼の寮の部屋に泊まるのだ。
激しく抱かれるのはもちろんだが、彼はシェリーの反応を楽しむため防音魔法を使わず、シェリーは必死に声を抑えなくてはいけない。
「隣に聞こえたらどうしようか。もしかしたら興奮しておっ勃ててるかもな」
そんな風にレオンに耳元で囁かれ、シェリーは男根を咥えている蜜壷をキュッとさせてしまうのだった。
その反応に喜んだレオンはより激しさを増し、ベッドがギシギシと音を立て続ける。
…結局、隣の部屋から苦情が入り、何回に1回は防音魔法を使ってくれるようになったのだったが、激しさは変わらないのだった。