第8章 私のストーリー
まだ朝日が昇る前――
「はぁっ…はぁっ」
目を覚ました…もとい、魔法書の世界から戻ってきたシェリーは必死に呼吸を整えていた。
魔法書の各ストーリーに続きが書けるのではと期待し、ペンを取ったシェリー。
まず書いたのは『幼馴染』とのストーリーだ。
初めてを経験した二人はその後、デートを重ねる度にヤリまくった。それはもうタガが外れたかのように。
そして、我慢できずに移動中の馬車の中でもするようになってしまったのだ。
彼氏であるハウロに「いいよね?いいよね!」と言われたら断ることのできないヒロイン。
移動中の馬車は縦揺れしやすかったが、彼に突き上げられる度に横にガタガタと揺れるようになり、通行人は中が見えなくても何が行われているかを察してしまう。
そして、移動中でも楽しめるようにと内装が改良された馬車のブームが到来するのだ。
街中ではおかしく揺れる馬車が多く行き交うようになり、ヒロインも周りを気にすることなく、たっぷりと情事を堪能する――と。
「我ながら良かったわ…はぁっ…」
書き始めたら止まらなかったシェリー。
空白のページには限りがあるため、なるべく小さい文字で書き綴ったのだ。
そして、「できた!」と呟いた瞬間文字が光を放ち、どうやらストーリーが確定されたのだと察した。
そして皆が寝静まった頃、シェリーは自分が書いた妄想ストーリーを体験したのだ。
そして体験後の現在、大変満足したが、何かがいつもと違うことに気づく。
まるで本当に抱かれたような感覚がするのはいつものことだ。それなのに、今日はよりリアルな気がした。
胸に残る指の感覚、舐めまわされたような感覚。
それに、下着のショーツは床に落ちており、おかげでシーツに大きな染みができていた。
いつも下着を濡らしてはいたが、こんなにシーツに染みを作る程ではなかった。
つまり、今まで以上に感じてしまったということだろうか。
シェリーは唇をペロリと舐める。
少し前までキスしていたような感覚に、身体が熱を帯びる。
「まさか…自分でストーリーを書くとよりリアルになるのかしら…」
顔を真っ赤にしたシェリーはそのまま眠ることができず、悶々としたまま朝を迎えるのだった――