第8章 私のストーリー
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目を閉じたまま、小さく呼吸をする。
それと同時に、あぁ…戻ってきたんだな、と実感した。
先程までリアルに感じていた生々しい空気から一変、今では自分の部屋の香りがする。
見事にハマってしまった魔法書の世界。
シェリーは今日もそのストーリーを体験してきたのだった。
「んっ…」
時間を確認しようと目を開け、もぞもぞと動く。
それだけで、まだ残っている熱が身体を駆け抜けた。
”今の”自分の身体が体験したわけでもないのに、まるで本当に抱かれたような感覚が残るのだ。おかげでアソコはしっとりと濡れている。
まだ部屋は薄暗く、朝になってはいなかった。
このまま寝てしまおう。
シェリーはもう一度瞼を閉じるとそのまま夢の中へと落ちていった――
***
「おはようございます、シェリー様」
使用人に起こされ、朝の身支度をする。
最近は毎日魔法書のストーリーに没頭しているため、なんだか寝不足気味だった。
とはいえ何度体験しても飽きず、それどころか、もっと続きを体験したい!と切望するようになっていた。
そんなある日、ふと気づく。
各ストーリーの間に空白のページがあることに。
まさか、読み手が続きを書けるのかしら。
ゴクリと唾を飲み、シェリーはペンを取ると、自分が望む続きを恐る恐る書くことにしたのだった――