第5章 抱きしめる意味
パタンとドアが閉まり夏油先輩の背中が廊下へと消えて行く。
「夏油先輩って本当に…優しいなぁ」
当然のように女性扱いしてくるスマートさすら、気が付けば受け入れてしまうほどに夏油先輩の優しさは自然だ。
ポツリとそう呟き閉まるドアを見つめれば、私は夏油先輩に言われた通り元の場所へと戻り夏油先輩を待つ事にした。
この部屋に来るのは二度目だが、相変わらず整理整頓されていて綺麗な部屋だ。
夏油先輩のあの落ち着く香りが部屋をふんわりと包み込んでいて、やはりとても落ち着く。
何か2回目とは思えないほど落ち着くなぁ、居心地が良いんだよね。
そんな事を考えながらキョロキョロと周りを見渡していると、突然鳴り出したポケットの携帯。ブーブーブーっと小刻みに震えるようにして着信を知らせている。
私はその震える携帯をポケットから取り出してピタリと動きを止めた。
食堂に行っている夏油先輩からか、それとも七ちゃんか雄ちゃんからだと思っていたからだ。
だけどそんな私の考えとは裏腹に、私の携帯に着信を知らせている人物の名前を見て思わずフリーズする。