第5章 抱きしめる意味
だけどこの時間が私達二人だけの秘密であって欲しいと、何処かでそう思った。
それは多分、目の前の夏油先輩が優しく私を見下ろしてくれたからだと思う。
「実は2作目もあるんだ、観るかい?」
どこかイタズラ気に笑う夏油先輩は、いつもの笑顔とは違い少しその表情は子供っぽく見えて
「はい、観たいです!じゃあやっぱりここで食べましょうか」
「そうだね、そうしようか」
そんな楽しそうな夏油先輩を見つめながら私も釣られて笑顔を向ければ、夏油先輩はゆっくりと立ち上がり「じゃあ取ってくるよ、少し待っていて」と言いながらドアへと向かって行く。
「夏油先輩私が行きますよ!」
「二人分は結構重いから、柊木じゃ大変だよ」
「なら一緒に行きます」
「私の部屋に夕食持って入る所を誰かに見たられたら、それこそマズイだろう?」
多分夏油先輩は、私が夏油先輩の部屋にいる事を五条先輩にバレたく無いって分かっている。だから前回も今日だって、色々気を遣ってくれていた。
「柊木は待っていて、私が取って来るから」
「でも…先輩にだけそんな事させるわけには…」
「良いんだよ、それに女の子に重たい物を持たせる気は無いからね」