第5章 抱きしめる意味
「どうかした?」
「いいえ!何でもありません」
もんもんとくだらない事を考えていると、夏油先輩はそんな私に不思議に思ったのか首を傾げていて、私は慌ててブンブンと横に顔を振った。
「そういえば夕食どうしようか。部屋に持ってくる?それともDVD観てから食堂行く?」
「あ、そうですね。まだお腹いっぱいですっかり忘れてました」
「じゃあDVD観た後に食べようか」
「夏油先輩はそれで大丈夫ですか?お腹空いてません?」
「私は大丈夫だよ、柊木がパンをくれたおかげでね」
夏油先輩は私にグレーの丸いクッションを手渡してくれると「ここ座って」と言った後、DVDデッキへとディスクを入れる。
「雄ちゃんに借りたDVDってどんなのですか?」
「アクション映画だよ、一時期話題になっていたやつだね」
「あ、これ観たいと思ってたやつです!」
「そっか、それなら良かったよ。誘った後に女の子をアクション映画に誘うってどうなんだと思っていたんだ」
「全然大丈夫ですよ、むしろ私アクション映画が一番好きです。恋愛映画とかはあんまり観ないんですよね」
「意外だね、好きそうなのに」