第5章 抱きしめる意味
女子寮から談話室の前の廊下を抜けて男子寮に入る際、キョロキョロと辺りを見渡す。もちろん誰かの呪力が近くに感じられないかもぬかりなく確認すれば、こっそりと足音を立てず夏油先輩の部屋へと向かう。
コンコンと二度ノックした所で「はい、今開けるよ」という夏油先輩の声が中から聞こえてきて、しばらくすると私の部屋と同じデザインの古びたドアがゆっくりと開いた。
「いらっしゃい」
「お邪魔します!」
「どうぞ」
黒のスウェット姿に髪をいつも通りおだんごにまとめている夏油先輩だが、そのラフな格好すらも絵になるから不思議だ。
私と似たようなスウェットを着ているとは思えない。というかそもそも私と夏油先輩は別に変な関係性では無いが、曲がりにも自分は女の子で…先輩の部屋に来たというのにこんなダラシないスウェット姿で良かったんだろうか…
いや、いつもこんなだらけた格好でばかり寮内をうろついているのだから先輩も見慣れた光景だろうが、夏油先輩はカッコイイから黒のスウェットすら着こなしているけど、私がスウェットを着ていてもただのパジャマでしかない…
なんか少し恥ずかしくなってきたも…一応女の子なのに…