第5章 抱きしめる意味
シャワーを捻り水を止めれば、鏡に映る自身を睨み付け浴槽を後にした。
髪を乱雑に拭きながらスウェットへと身体を通す。流石に濡れた髪のまま夏油先輩の部屋にいくのは気が引けて軽くドライヤーで乾かした後ベッドの上で点滅している携帯を手に取った。
まさか五条先輩からの連絡?なんて胸が一瞬浮上するものの、開いたメッセージは夏油先輩からの【もういつ来ても良いからね】というそんな私を気遣う連絡に、やっぱり自分はどこまでも馬鹿な人間だと呆れたくなった。
もう今夜は五条先輩の事は忘れよう。
そのために夏油先輩が部屋に誘ってくれたんだ。私のこの馬鹿みたいに素直で腫れぼったい傷を少しでもマシにさせるために。
それなのにこんなにも一人になった瞬間五条先輩の事ばかりが頭の中を埋め尽くしていて、それこそ夏油先輩に申し訳ない気分になる。
私って…慰めがいが無さすぎるでしょ。
夏油先輩へと【あと5分くらいで向かいます】と返信を送ると、冷蔵庫からりんごジュースとミルクティー、そしてチョコレートと常備しておいたスナック菓子をビニール袋へと詰め込んで、携帯をポケットへと押し込むとそのまま部屋を出た。