第5章 抱きしめる意味
部屋に戻ると急いでシャワールームへと向かう。服を脱ぎ捨てシャワーを頭から浴びれば、鏡に映る自分の胸元を見て強く唇を噛み締めた。
真っ赤に染る紅く咲いた花。
五条先輩が付けたソレは、私が嫌になるほど五条先輩を好きだという事を思い出させるようにしてその存在を放っている。普段ならその赤い痕を見れば飛び跳ねるほどに嬉しいのに。
今はただ、苦しいだけだ。
正直五条先輩がキスマークを付けるなど、初めて見た時は意外を通りこして驚きのあまり言葉にならなかった。
でもこれは、独占欲だとかそんな可愛らしいものなんかじゃなくて…多分、ただ何となく雰囲気に流されて付けてしまっただけなんだろう。
その証拠に、ほとんどこうしてキスマークを付けることなどなくて…本当に時々まるで思い出したかのようにして私の首元に花が咲く。それも…他のセフレの人にもしているんだと思うと、胸が張り裂けそうなほど痛かった。
「はぁ…苦し…」
それは重苦しく、何処までも私を追い詰めそして心にしこりを残す。
先輩を好きになればなるほど、今よりもずっとずっと苦しくなっていく。彼を好きになった時は、こんなこと想像すらしていなかったはずなのに。