第29章 本当は
私が苦しむなんて間違っている。だって私にそんな資格なんて少しすらない。先輩を傷付けたのは…私なんだから。
五条先輩のことがずっとずっと好きだった。好きで好きでどうしようもないくらいに好きで、だけどそれと同じ分だけ傷付いてきた。
痛くて重くて苦しくて、そんな私に手を差し伸べてくれたのはいつだって傑先輩で。私の変化に気が付くのも、ひとりぼっちでいる私を見つけてくれるのも、いつも傑先輩だった。
…傑先輩だったんだよ。
そんなの分かってる。もうずっと前から。
「ごめん、ボーっとしてた!何?」
「えっと、昨日何時に寝た?って話しだったんだけど」
「昨日か…昨日は寝落ちしちゃったんだよね」
本当はほとんど寝れてなんていない。ベットに潜っても、考えることは傑先輩のことばかりで…
心配かけまいと小さく笑いながらそう答えれば、私がどこかいつもと違うと気が付いたのだろう。雄ちゃんは一瞬不思議そうにしていたが、すぐさまそんな素振りを見せることもなく「そっか!」と優しい笑顔を向けてくれる。多分、気を使ってくれたんだと思う。
「目的地までは時間がかかるみたいですよ。少し寝たらどうですか」
「…え?」
「疲れた顔してますよ、まだ任務はこれからなのに」
そう言った七ちゃんは腕を組みながら自身もそっと瞳を閉じると、ゆっくりと身体を後部座席の背もたれへと沈めた。
「うん、そうしようかな」