第4章 感謝の気持ち
しかし中からの返事はなくて、どうやら夏油先輩はまだ帰って来ていないようだ。
やっぱり三年生は忙しいんだなぁ。なんて思いながら引き返そうと数歩あるいた所で前から足音が聞こえてきて、そちらへと目を向ければ丁度学ラン姿の夏油先輩が歩いてくるところだった。
どうやら夏油先輩もそんな私に気が付いたのか、少しばかり驚いたような表情を見せると私の前で足を止め優しく微笑む。
「こんな所でどうしたんだい?悟に用事?でも悟は今日任務が深夜までかかると言っていたよ」
「あ、違うんです!夏油先輩に会いに来たんです」
そう言って顔を見上げた私を、夏油先輩は目を丸め再び驚いたような表情を見せると「私にかい?」と首を傾げた。
「はい、あの、これ…この前のお礼です!!」
持っていた焦茶色の袋を前へと差し出せば、夏油先輩はその袋を見つめ私へと問いかける。
「もらって良いの?」
「はい!この前は本当にありがとうございました!これは七ちゃんオススメのパン屋さんで買ってきました」
「そんなの気にしなくて良かったのに。でもありがとう、嬉しいよ」
夏油先輩は目尻をゆるりと下げると、私の手渡した袋を持ち上げて「七海オススメのパンなら間違いなく美味いだろうね」と嬉しそうに笑顔を見せる。