第29章 本当は
「っ…あなたがあの?」
「おっ、いいね!どのどの?」
「特級のくせに任務を全く受けず、海外をプラプラしてるろくでなしの…」
「………私、高専ってキラーイ」
九十九さんのいじけたような声の後に、今度はワントーン落とした声が私の耳へと届く。
「冗談、でも高専と方針が合わないのは本当。ここの人達がやってるのは対処療法。私は原因療法がしたいの」
……原因療法。私達が今まで必死になってやってきたことは、対処療法だったってこと…?
ズクンっと、胸の奥底に重たい何かが落ちていくような感覚がする。今までそんなこと…考えてもいなかった。私達がやっていることはそれが当然で、そして最善なのだと思っていたからだ。
けれど彼女が言っていることは何ら間違ってなどいない。私達はただ、毎回のように必死になっていつ終わるかもわからない溢れ出る呪霊を祓っているだけ。
そう、それだけなのだから。