第28章 染まりゆく
コツコツと革靴が擦れる音が響いて、そのまま私の目の前で足を止めた五条先輩はゆっくりとこちらへと手を伸ばす。
その手は一瞬躊躇いのような動きを見せるが、そのままこちらへとゆっくりと進んでくると、私の手を柔く握りしめた。
「……っ」
五条先輩の握りしめた場所から、少しずつ呪力が流れ込んでくるのが分かる。温かくて穏やかで、それなのに力強く鮮麗された呪力。
「呪力の細かなコントロールなんて対して問題じゃねぇ、質さえ良ければそれで良い。お前の場合だったら爆発させる一瞬、その一瞬で質の良い呪力をほんの数秒保てれば良いんだ」
呪力の質…
「俺に合わせて呪力を練り上げるイメージでやってみろ。きっと一度コツさえ掴めれば次は簡単に出来る」
五条先輩の呪力に合わせて己の呪力を練り上げる。うん、何かいつもと違う感じがする。多分、五条先輩の呪力が私をリードしてくれているんだ。
五条先輩はズボンのポケットから何かを取り出すと、私の手を握ったままそれを床へと置いた。
薄ピンク色の袋に包まれたいちごミルクの飴玉が三つ。