第28章 染まりゆく
先輩はその飴玉の上に私の手を置くと、その上から自身の手を覆い被せるようにしてグッと力を込めた。
「集中しろ、行くぞ」
「うん」
五条先輩の低い声に少しばかり緊張を乗せながらも、手先の細かな感覚まで全てに集中する。
呪力が掌の中心部に集まってくる感覚、それは一瞬にして一塊のように凝固されると次の瞬間にはフッと私の手から離れていった。
ドゴンッ、ガラガラガラー
そんな漫画のようなありきたりな交換音の後、自身の置いていた手の周りに円を描くようにして三十センチほどの穴が空いていることに気が付いた。そしてさらに、手元を見つめればそれは手の中でパチパチと小さな花を咲かせるようにして火花が散っている。飴玉だ。
「やればできんじゃん」
そんな五条先輩の言葉に、やっと目の前で起きていることを理解する。
「…出来た」
爆発の使い分けどころか、手を置いた部分に一点集中で爆破出来ている。え、すごい、こんなの初めて出来た…
「やった…やったー!!五条先輩出来た!すごい!!初めて出来たよこんなの!!」
パッと視線を持ち上げ、ぴょんぴょんと今にも飛び跳ねそうなほどの喜びようで五条先輩を見つめ、私はそこでそのまま思わずピタリと止まった。
だって…目の前の五条先輩が、あまりにも優しい表情でこちらを見つめていたからだ。