第28章 染まりゆく
五条先輩が報告書を書いているのを横目で見ながら、硝子先輩の机へと預かり物を入れるとメールを開きその旨を伝える内容を打ち込む。
「よし、送信〜」
送信ボタンを押して、メールが無事に届いたことを知らせる画面を見て私はそのまま教室の窓から外を見つめた。
広々としたグラウンドが見えるこの場所。普通ならば人で溢れている時間帯だろうに。そこには生徒なんか一人だっていはしない。部活をしている生徒など高専にはいないからだ。
そもそももしスポーツがやりたくても人が少なすぎてチームすら作れないだろう。そう思うと何だか笑えるな、なんて考えてフッと笑ってから私はピタリと動きを止めた。
「…もしかして五条先輩、さっきここから私のこと見てた?」
報告書を書いている途中だと言った五条先輩、それならばグラウンドにいるのはどう考えたっておかしい。
私の言葉に、珍しくスラスラとシャープペンシルを走らせていた手を五条先輩は止めると、ゆっくりとこちらを振り返った。
ガタリと椅子が床にぶつかる音がする。五条先輩が立ち上がったからだ。