第28章 染まりゆく
「何、傑?あいつなら今日いねぇよ。埼玉で任務だっつってたかな」
「うん知ってる、今日は硝子先輩に用事。補助監督さんに渡してほしい資料があるって言われて」
「あぁ、なるほど。でも硝子も教室にはいなかったけど」
「そっか、急ぎじゃないって言ってたし机に入れてメール送っとこうかな」
夕暮れの校舎を五条先輩と隣立って歩く。一人で歩く時はいつも長い脚ですたすたと歩いて行くのに、今はそうじゃない。私の歩幅に合わせて歩いてくれてるのが分かる。
こういうところ、本当は凄く優しいんだよね。
先輩達の教室に着けば、そこには誰も居なくて。広々とした教室に机が三つ置いてあるだけだ。五条先輩は廊下側にある自分の席へと座ると、机の上に無造作に置いてあるシャープペンシルを握りしめそれをくるくると回し始めた。
「報告書書いてる途中だったの?」
数枚の報告書が置いてあるのを見るに、今日はそれだけの件数の任務をこなして来たということなのだろう。
「まぁね」
「五条先輩がすぐに報告書ちゃんと書いてるなんて珍しいね」
「いつも書いてるわ」