第28章 染まりゆく
背中に意識を全集中させる。ゆっくりと、私の持つ呪力全てがただ溢れ出すようなイメージで。
ふつふつと体の奥底から何かが湧き上がってくる気配がする。それらはまるで体を巡るようにしてぐるりと力が増幅されていくと、そのまま真っ直ぐに背中へと流れていく。
うん、何だか行けそうな気がする。今の私なら…出来そうな…
トンっ
額に軽く触れた何か、それを感じた瞬間一気に練り上げていた呪力がスッと消えて無くなる。
「おいコラ、グラウンド爆破するつもりか」
「え…五条先輩?」
まるでベッドへと寝転ぶかのようにごろりとグラウンドへと転がっていた私の体がピクリと動き、それに合わせて驚いたように瞳を開けば目の前には上半身を屈めこちらを覗き込んでいる五条先輩がいた。私の額には五条先輩の人差し指と中指の二本が優しく触れている。
「…何してるの?」
「それはこっちの台詞だわ」
「私は呪力コントロールの練習中…」
「全力でグラウンド爆発させようと?」
「えっ、違うよ!!呪力を上手くコントロール出来たら止めるはずだった!」
私の言葉を聞いた五条先輩は、屈んだまま私へと手を差し出す。それをぎゅっと握り締めれば軽々とそのまま私を立たせてくれた。