第28章 染まりゆく
「…おはよう」
掠れた声。きっとこんな姿の傑先輩を見れるのは私だけだ。
「傑先輩、おはよう」
寝転んだまま傑先輩を見つめれば、未だ寝ぼけているのだろうか焦点が合っていないようでグッと眉間にシワを寄せている。
「そろそろ朝ごはんの時間だけど行く?」
「うん…まだこのまま一緒にいたい…」
何か少し会話が噛み合っていないような気もするけれど、まぁ良いか。傑先輩がこうして甘えてくれるのなら。それで良い。
「そうしよっか、もう少しこのままゆっくりしてよう」
「ん、エナ」
私の腰回りに回っていた逞しい腕に力がこもる。この温もりに安心感を覚えるようになったのはいつからだろうか。傑先輩もそうだったら良いな。
少しでも傑先輩の力になれていたら、良いのにな。