第28章 染まりゆく
朝目を覚ませば、スースーと寝息を立てている彼の姿を見てホッと息を吐き出す。昨日寝る前に、最近あまり寝れていないと言っていたからだ。
寝る時は確かに私が傑先輩を抱き締めて眠っていたはずなのに、今はすっかり逆転していて、私が傑先輩に抱き締められている。
目元にあるクマをそっと撫でた。いくらかマシになったであろうその場所にはまだ少し陰が残っているけれど、昨日よりは薄くなったようにも見える。少しでも睡眠が取れたなら良かったな。そんなことを思いながら傑先輩の寝顔を眺める。
整った顔立ちが、いつもよりも疲れて見える。お疲れ様という気持ちを込めて額へとちゅっと軽くキスを落とせば
「…ん」
ゴーゴーと勢い良く噴き出しているエアコンのせいか、口先が少し冷たくなっていたのかもしれない。軽く眉間にシワを寄せた傑先輩がもぞもぞと身体を動かし私を再びぎゅっと抱き締めた。
起こしちゃったかな。
もぞりと動いた先輩は、そのまま私の首元へと顔を寄せると「んん…」と短い声を漏らしながら擦り寄ってくる。まるで猫だ。
そんな姿に、いつもの爽やかなイメージと正反対のそれに可愛ななどと思いながら乱れた髪をサラサラと撫でれば、切長な瞳がうっすらと開かれる。