第28章 染まりゆく
「…エナ」
「うん」
「…ごめん」
「何で謝るの」
「君が来てくれて…良かった…」
この人の全てを包んでしまえたらと思う。辛さや悲しみや苦しさ…その全てを、私が包み和らげてあげられたらと思う。
「…少し、疲れてしまったみたいだ…仕方がないことだと…分かっているはずなのに」
「…先輩」
「…すまない、少しだけ…少しだけ…今は、こうさせてくれるかい…」
「うん…いくらだってするよ、ずっとずっと…傑先輩を抱き締めるから」
傑先輩が私にそうしてくれていたように。ずっと、ずっと。
この時の傑先輩の声は、ぽつりぽつりと呟くようにして…微かに震えていた。