第28章 染まりゆく
「どうしたんだい」
静かで優しい声。私のこんな突然の行動ですら優しく受け止めてくれる。例え、どんなに自分が疲れていたとしても。こうやって優しさを見せれる傑先輩は凄いと思う。
そう出来ることじゃない、自分よりも他の人を想いやれるなんて。だからこそ…
「…心配なんだよ」
さっきまでは、この言葉を言ってはいけないと思っていたはずなのに。
ゆっくりと顔を持ち上げれば、こちらを見下ろす傑先輩の髪がサラリと頬に触れる。暗闇に見慣れた視線をスッと真っ直ぐに見つめ指先を伸ばした。
目元にあるクマ、触れた先の顔はいつもよりも冷たく感じてそしてやはり少し痩せたように感じる。
「…傑先輩のことが、心配なんだよ」
私の身体へと回っていた傑先輩の腕にぐっと力がこもる。ほんの一瞬、けれど確かにそれは私の身体へと力を伝える。
抱きしめ合ったまま横にあったベッドへとトンっと優しく寝転ぶようにして身体を動かせば、傑先輩は私にされるがまま一緒ベッドへと横になった。
傑先輩の綺麗な漆黒の髪がハラハラとシーツの上に咲き乱れる。それを丁寧にかき集めるようにして一纏めにした後、そのまま頭から覆い尽くすようにして傑先輩を抱きしめた。