第28章 染まりゆく
いつもと一緒だ。それなのに少しどこか違って見える。それに気が付いたのは、ベッドへと向かう数メールの距離の間にコツンと何かが二度目にぶつかった時だった。
空のペットボトルが、私の足に触れ勢いのままに転がっていく。
「ごめん、蹴っ飛ばしちゃった」
「今少し部屋が散らかっているんだ、今度片付けなければいけないね」
いつもならば狭い部屋ながらにも物一つ転がっていないのに、空のペットボトル。それに違和感を感じた。ペットボトルに触れる前は、暗くて分かりにくかったけれど脱ぎ捨てられた制服が足先に触れたのを思い出す。
来るたびに綺麗に整えられていた傑先輩の部屋。それは突然来た時も今まで一度だってそれに例外はなかったはずだ。
それなのに今は…そうではない。それだけ最近は忙しくて、余裕がなかったということなのかもしれない。
私はくるりと振り返ると、後ろにいるであろう傑先輩目掛けて抱きついた。
「おっと」
突然のことに驚いた様子の傑先輩が、そのまましっかりと私を受け止める。