第28章 染まりゆく
一人寮へと繋がる石畳を歩く。“夏油さ、アイツ最近元気ないよ”そう言った硝子先輩。
前回会った時の傑先輩は私に疲れた様子を見せまいとしていたのだろうか。うっすらと目元にはクマがあったはずなのに、私に会えて嬉しいとニコニコと微笑んでいたのを覚えている。
疲れていると思う。いや、疲れていないはずがない。
連日の遠出での任務、特級呪術師にしか受け終えない任務は沢山あるはずなのに、特級呪術師の数とそれはまるで合っていない。つまりは、特級呪術師であるほんの数人が、日本全国の特級案件を全て引き受けていることになる。
傑先輩のことを疲れていそうだと硝子先輩は言わなかった。元気がないと言っていた…それが気がかりで、ポケットに入れていた携帯を開く。
朝、連絡を取った時には今日は県外の任務だから帰りは夜中になるって言っていたっけ。今会いに行ってもいるはずがない。
私は再び携帯をポケットへとしまい込むと、そのまま自室へと向かった。