第28章 染まりゆく
硝子先輩の反転術式は本当に何度見ても凄い。五条先輩も自分になら使えるようになったと言っていたけれど、他の人を治療できるのは硝子先輩だけだ。
本当に私達はこの人に何度お世話になったことだろう。硝子先輩が居なかったらとっくに死んでいたかもしれないとすら思う。
「ほら、灰原行きますよ」
「家入さん、本当にありがとうございました!」
「はーい、お大事に」
古びた木製のドアを開け外へと出て行く七ちゃんと雄ちゃん。それに着いて行くようにして部屋を出ようと足輪踏み出したところで「エナ」と名前を呼ばれた。
もちろん今この部屋には私と硝子先輩しかいないわけで、硝子先輩が私を呼び止めたのだと分かる。
「どうしたんですか?硝子先輩」
「最近夏油に会ってる?」
…傑先輩に?
「あんまり会えてないです、お互い忙しくて全然予定が合わなくて。会えても夜に少しだけとか」
傑先輩は特級呪術師になった。特級呪術師なんて本当に冗談でしか聞かないレベルで、レアなんてものじゃない。国内にいる何人もの術師の中で片手で数えるほどしかいないのだ。そして傑先輩がそのうちの一人。
そんな彼が忙しくないわけがない。だからここしばらくまともに会えていないのも本当。会えたとして、任務帰宅後の一時間でも一緒に居られたら良い方だ。