第28章 染まりゆく
「あー、つっかれたぁー」
「耳元で大声を出さないで下さい」
「うー、ごめん」
任務後、補助監督の運転する車の後部座席に座りながら七ちゃんの肩へともたれる。
「のど…渇いた…」
「水ならあらりますよ」
七ちゃんは手に持っていたペットボトルを私に手渡すと、私は半分ほどになっているそれをこくこくと飲みこんだ。なかなかハードな任務だったため、三人ともヘトヘトだ。
「雄ちゃんパース」
蓋を閉めないまま今度は私にもたれている雄ちゃんへとそれを手渡そうとするが雄ちゃんは「飲めない…」と小さな声を漏らした。
「どうしたの雄ちゃん。もしかして、さっき最後に脇腹に一発やられたのヤバイ?」
「うん、どうやらまた肋骨折れてる気がする…」
「えぇっ」
「灰原が肋骨を折るのは今年に入って四回目ですね」
「七海…冷静に計算するのやめて!」
いくら術師は大きな怪我が多く骨折に慣れていたとして、骨を折って痛くないはずがない。さらに場所が場所だけに、臓器にでも刺さっていたら一大事だ。でも今の彼を見るにそれはなさそうでほっと安心する。