第27章 初めての
傑先輩は私を抱きしめたままコツンと私の肩へと頭を預けると「はぁ」と小さな溜息を吐き出す。
「やっぱり…疲れてるよね」
「違うよ、これは幸せすぎて思わず出た溜息」
「ふふ、何それ」
「君の隣にいられて、私は幸せなんだよ」
心の底から出てきたようなそんな言葉に、胸の奥が撫でられたようにギュッとする。胸がドキドキして、そして温かい。
「けれど、実は帰ってきてからここに直接来たからまだ報告書も提出していないんだ」
「…そっか」
だけれど、真面目な傑先輩が報告書の提出よりも先に私に会いに来てくれたことが嬉しい。だって何よりも私のことを考えてくれていたってことだろうから。
「だから報告書を提出してシャワーを浴びてきたら、またここに来ても良いかい?」
目尻が下がる、まるで瞳が弧を描くようにふんわりとした動作で。
「うんもちろん!待ってるね」
名残惜しそうに私を見下ろしながらも、一度唇へとちゅっと可愛らしいキスを落とすと、傑先輩は私の頭を優しく撫でて寮の廊下を歩いて行った。
その広い背中を見ながら思う。傑先輩、早く戻って来てほしいな。
そんなことを考えながら、その背中を見送った。