第27章 初めての
「ごめん…なさい、傑先輩…ごめんなさい」
震えた声が情け無い。それなのに、そんな私のことですら、愛おし気に見下ろしてくれるこの人の腕の中で安心しない方が無理な話だった。
「いいや、私の方こそごめん。エナの気持ちを優先してあげられていなかった」
「そんなことない…私が弱いのがいけないんだよ」
「それは違うよ…君のことがとにかく心配だったんだ。エナが少しでも傷付く姿を見たく無かった。術師をしていたらそんなことも言っていられないのにね。私の自分勝手な行動だ。先輩として後輩を見守らなくてはいけない立場なはずなのに」
七ちゃんが言っていたことを思い出す。「あの人に直接聞いてみて下さい」そう言っていた言葉を。
分かっていたはずだ。大切な人が傷付くことの恐怖を。傑先輩が意識不明になったと聞いた時、どれほど胸が押し潰されそうな思いをしたのかも、分かっていたはずだ。
それなのに私は…
「…傑先輩」
やっぱり私が悪い。傑先輩の気持ちを分かってあげられていなかった。分からなくちゃいけなかったはずなのに。同じ呪術師だからこそ、理解してあげるべきだったのに。