第27章 初めての
たった数メール。たった数メールしかないはずの部屋の中がやけに遠く感じる。いつもは手狭でもう少し部屋が広ければいいのに何て思っていたはずなのに、今はこんな短い距離ですらもどかしく感じる。
バンっと勢い良く扉を開けば、そこに立っていた人物はまさかこんな勢いで私が飛び出してくるなど思ってもいなかったのだろう。少しばかり驚いたような表情を見せた後、ふにゃりと眉を垂れ下げて微笑んだ。
「ただいま」
その声を聞いた瞬間泣きたくなった。そして気が付いた時にはその胸の中へと飛び込んでいてた。その温もりと香りを感じた瞬間酷く安心する。
とんでもない勢いで飛び込んだにも関わらず、私を受け止めた彼は少しですらよろけることもなく私を完璧に受け止めて見せると「傑先輩…おかえりない…」と今にも消え入りそうな声でそう呟いた私の身体を優しく抱きしめた。
「…任務は?」
一週間の任務だと聞いていた。だけれど今日はまだ5日目だ。帰って来る予定じゃなかったはずなのに。
「早く終わらせてきた。君に会いたくて」
一週間の任務予定を2日も早く戻って来るなんて、一体どれほどの無理をしたのだろうか。見上げた視線の先には少しばかり疲れた表情がある。それなのに、その顔付きはとても優し気で私を愛おしそうに見下ろしていて、喉まで込み上げてくる涙をグッと堪えた。