第27章 初めての
最近、五条先輩が以前よりも優しくなったような気がする。
それともこれは、五条先輩とのセフレという関係が無くなって…少なからずいくらか自分の心に余裕が出来たからそう思えるようになったということだろうか。
それでもまだ胸が痛むのは、今でも変わらず残っている。シコリのようなものがずっと。ずっと残っている…
これがどうしたら消えるのか。どうするべきなのか…分からない…分からないけれど…私は…
部屋へと戻り、ベッドへと座ればポケットの中にある携帯を開いて直ぐに傑先輩の名前をアドレス帳から探す。
その名前をジッと見つめ、意を決したように通話ボタンへと指を伸ばしかけた瞬間。
コンコンと響き渡る古びた木製の音。誰がドアをノックしている音だ。
七ちゃんか雄ちゃんだろうか。何かさっき忘れ物でもしちゃったかな?そんなことを考えながら携帯を持ったまま立ち上がり、一歩足を踏み出した所で私は勢い良く走り出した。
手に持っていた携帯がゴトリという音を立てて床へと落下していく。だけれどそんなことお構い無しに走り出した。