第27章 初めての
「ふーん」
「聞いといて興味ないんだね」
「まぁ五条先輩らしいけど」そう不貞腐れたよう言いながらも笑って先輩を見上げれば、いつの間にかこちらをジッと見下ろしていた五条先輩と視線が交わって、その表情がどこか真剣な顔つきであることに気がついた。
あ、と思った。
手を繋いでいたはずの五条先輩の腕が、スッとこちらへと伸びてくる。けれどそれは私の頬へと触れるギリギリのところで何かを感じ取ったかのようにピタリと止まると…
「…五条…先輩…?」
五条先輩は私の声にピクリと身体を揺らし、そのまま何事も無かったかのように再び歩き出す。
「直ぐ仲直り出来んだろ。傑のやつ、すげー落ち込んでたぞ。さっさと許してやれ」
先ほどまでの真剣な表情を崩しニヤッと笑うと、私の髪を一度ぐしゃりと撫でた。その手はやけに温かくて、私の心臓を早めるには十分だった。