第27章 初めての
正直言って高専から一番近いコンビニまでは相当な距離がある。歩いて30分はかかるだろうか。高専は人が寄り付かないほどの山の上にあって、任務に行く時は車が必須なほどの僻地。
でもそれもそうか、呪いに関する様々な資料や呪物が保管されているのだ。そこいらの人間が直ぐに来れる場所にそんな建物を建てるわけにはいかないだろうから。
けれど今の私にとってはこの距離がありがたくもある。頭を冷やすにはピッタリだ。ただ馬鹿みたいに続く長い長い下り坂を降って考える。やっぱり自分のしていたことはどうしようもなく酷い行いだったと。
傑先輩を傷付けたはずだ…
付き合って初めての喧嘩。それがこんなにも胸を締め付け、どうしたら良いのか分からなくなるとは思ってもいなかった。
コンビニへと着いて中へと入ろうとした所で、入り口付近にいる数名の男性がこちらを見てニヤニヤとしているのが視界に映る。
はぁ、絡まれそうだな…面倒だ。まぁ私が一般の男性相手に手を出されて困ることなんて無いのだけれど…だからといって呪霊相手のように拳を振るわけにもいかない。
それなりの態度で、やんわりとかわすのがベストだろう。
そして案の定とでも言おうか、入り口の目の前に立った瞬間「おねーえさん」と弾んだような声がこちらへと飛んで来た。