第27章 初めての
普段ならば、事あるごとにお互い連絡を取り合っているのに。
今日はどんな任務に行っただとか、何を食べたとか、日常にあった面白い話だとか…そんな些細な会話をメールや電話で楽しんでいるのに。
どちらかが泊まりでの任務に行くときなんかは尚更だ。今までこんなこと一度だってなかった。傑先輩からは、必ずメールや電話が来ていたから。
でも今回は一度も来ていない。それはそうだろう…私が馬鹿みたいに怒って傑先輩を避けていたのだから。
高専内で会った時に、傑先輩が何度か話しかけて来ようとしていたのを分かっていた。この前硝子先輩に漫画を返しに行った時だってそうだ。それなのに…私はそれに気が付かないフリをした。
馬鹿みたいに怒って情け無い自分へ嫌悪を抱きながらも、引っ込みがつかなくなっていた。まるで子供だ…
「私って…ほんと馬鹿だなぁ…」
見つめる先には「傑先輩」と表示された文字。その名を見るだけで胸がぎゅっとする。
「はああぁぁぁー」
信じられないほどに大きな溜息を吐き出すと、私は一度携帯を閉じて立ち上がる。
ちょっと一回糖分でも摂って落ち着こう。甘いものを食べると頭の回転良くなるとか言うよね。まぁ頭の回転を良くした所でどうするんだって話しなんだけど…一度落ち着いてからちゃんと傑先輩へと連絡を入れよう。