第27章 初めての
私に怒る資格なんてない。私が一人で勝手に怒っていじけて…傑先輩を無視してしまった。
見てて欲しいと言ったけれど、擦り傷を付けた瞬間祓ってしまった傑先輩に腹を立てて…私が腹を立てるのはどう考えてもお門違いなはずなのに。
自分と傑先輩とのレベルの差に情け無さと悔しさを感じた。知っていたはずなのに。私はこの人の足元にも及ばないと。そんなの私の勝手な苛立ちで傑先輩を怒るのはどう考えても間違っている。なのに自分の弱さに馬鹿みたいに惨めな気持ちになって腹を立てた。
かすり傷程度ですぐさま先輩が祓ってしまったのも、私一人には荷が重いと…これ以上何か起きる前にと傑先輩が対応してくれたんだ。分かっている。冷静になった今なら。それら全てを理解出来ているのに。
「それは夏油さんが悪いですね」
「へ?」
それは予想外の言葉だった。
「かすり傷程度で止める必要は無かったはずです。一瞬で祓えるような相手なら尚更」
「でもそれは、私がなかなか祓えなかったからであって…」
「あの人はそんな甘い人じゃありませんよ。それは貴方も分かっているでしょう」
「う…ん…」
「はぁ、まぁ大体の理由は分かります。あの人のことですから恐らく…」
全てを理解したようにそう言って言葉を止めてしまった七ちゃんにキョトンと首を傾げてみせれば、真剣な表情で聞いてくれていた雄ちゃんが代わりににこりと微笑んだ。
「夏油さんは本当に、エナちゃんをすごく大切に思ってるんね」
「………っ」
「何故馬鹿でもなければ大抵の呪霊ならば容赦無く祓えてしまうあの人がそんな行動を取ったのか、少し考えれば貴方が怒るかもしれないと分かるはずなのにそんなことをしたのか。その理由は夏油さんに直接聞いてみて下さい。それがきっと一番良いはずです」