第3章 気付かないふり
五条先輩の白く綺麗な手が私の下着にかけられた瞬間、ブーブーブーっと鈍く聞き慣れた音が教室内に響き渡る。
携帯の音。その音に一瞬ピクリと二人で身体を揺らす。私のか…それとも先輩のか…
五条先輩は大きな溜息を吐き出しチッと大きな舌打ちを落とすと、私の下着にかけていた手を解き身体をゆっくりと離した。
そして五条先輩のポケットから取り出された見覚えのあるそれに、私は目を丸める。
「…私の、携帯?」
任務用に支給されている携帯だ。
「気づいてなかったのかよ、部屋に忘れてた」
「えっ!全然気づいてなかった!!」
「術師は携帯必須だろ、常に待っとけよ」
呆れた様子の五条先輩はブーブーと鳴り続ける携帯を私へと手渡すと、機嫌が悪そうに再びサングラスを付けた。
それはそうだ、今この状況でこのタイミングだ。だけど私としては思わずホッとしてしまった。だって…やっぱりこんな所誰かに見られるわけにはいかないし、五条先輩との関係をバレたくないからだ。