第26章 極秘任務
特に喋るわけでもない、何かが起きるわけでもない。
ただただ私の肩へと身体を預ける五条先輩の息遣いと、私の心臓のドクドクという音だけが聞こえる。
何と声をかけたらいいのかも…何と声をかけるべきなのかも分からなくて。
ただ持て余すように余裕のない心のまま、微かに震える指先で五条先輩の頭をそっと撫でた。
ふわふわとまるで綿毛のように柔らかな髪は、指先に絡まることなくするすると私の指の間を通り抜ける。
五条先輩はそんな私の行動に、何かを言うことも無くただ身体を預けるようにして頭を擦り寄せた。
まるで迷子にでもなってしまった猫のようだ。いや、ふらりと気まぐれに現れる猫だろうか。とにかく今の五条先輩は、どこかそんな風に掴みどころが無いように思えた。
いつもは天上天下唯我独尊で己の思うままに突き進む五条先輩は、ある意味に単純で分かりやすい。
けれど今の五条先輩はやはりどこか今までと違って見えて、私はただひたすらに今目の前で私へと身体を預けてくれている五条先輩の頭を撫で続けた。
それが今の五条先輩にとって、必要なことのように思えたから。