第26章 極秘任務
そんな空気に耐えきれず「あ、そのパン五条先輩が好きそうだと思って!」そんなことを慌てて口走り置いてあったビニール袋を前へと突き出せば、五条先輩はその袋を握りしめ中身を確認した後そっと隣へと置いた。
ゆっくりと起き上がる。まるでそれが当然であるかのように私の手を握りしめたまま。
「…先輩?どうしたの?」そう言葉を続けようとして、その透き通る碧色を目の前に言葉を噤んだ。
いつもとどこか違う。
瞬間でそう思った。五条先輩のはずだ、私の知っている五条先輩のはずだ。
それなのに、今目の前にいるこの人が私の知る五条悟なのか…と思うほどにそれは今までの彼とは別人で。
澄んだ碧色の瞳が真っ直ぐ私を捉える。
それはどこまでも綺麗な色をしていて
そして怖いほどに美しかった。
「…五条…先輩」
先輩の名前を呼ぶ私の声がポツリと響き、それはこの静かな空間にやけに反射してそして聞こえる。
「少しだけ、こうさせて」
少し掠れた声。けれどそれは力の無い声ではなくて、どこか寂しげなそんな声。
目の前へとしゃがみ込んでいた私の肩へと、とんっと五条先輩の頭が乗っかった。