第26章 極秘任務
無事で良かった。
本当に。
「…帰って来てくれて…ありがとう」
術師にとって、死が身近にあることは日常と言っても過言ではない。昨日まで会えていた仲間が次の日にはもう居ないなんてことはザラにあって…
そんなことそうそうあってたまるかと思うはずなのに…それが日々日常的に起きている。
そしてそれを日常的に思ってしまっている自分自身が怖かった。いつか大切な人の死も、こうして当たり前のように受け入れなくてはならないかと思うと。
そろそろ行こう。五条先輩が起きちゃうかもしれない。
ゆっくりと立ち上がりそっと手を退けその場を後にしようとしたところで、不意にグイッと手が掴まれた。
「…っ」
自身の手へと目を向けそのまま腕が引かれている方へと視線を寄越せば、五条先輩の瞳が先ほどとは違いしっかりと開かれ私の手を握りしめている。
「あ…ごめん、起こしちゃった?」
「いいや、起きてた」
「…起きてたの?」
つまりは私のさっきの独り言聞かれてたってこと…?
内心動揺しつつも、特に先ほどの言葉に触れてくる素振りを見せない五条先輩は、何故か私をジッと見つめ手を掴んだまま黙りとしている。