第26章 極秘任務
寮の入り口へと入り談話室を通り過ぎようとした所で、私はあるものが目に入ってピタリと足を止めた。
談話室に置かれているソファーの肘掛けから覗く白くふわふわとしたソレは、まるで綿毛の様に窓から入る風に揺られゆらりと舞っている。
…五条先輩だ。
話しかけようかこのパンを渡そうかとそんなことを一瞬考えて、私はぎゅっと袋を握りしめ歩き出す。
コツコツと革靴の音を鳴らしソファーの前で足を止めれば、そこには珍しくサングラスをしていない五条先輩が目を瞑り眠っていた。
美しい顔だと思う。
まるで作り物のように美しくて陶器のように滑らかな肌だ。
まさか寝ているとは思っていなかったから、持っていたビニール袋を持ち上げ躊躇ったあと、そっと五条先輩の手元の空いた空間にパンの入った袋を置いた。
置き手紙やメッセージは必要ないだろう。このパンが私からなのかが重要なのではない。少しでも五条先輩の好きな物を食べて元気を出してくれたらそれで良い。
私はしゃがみ込んでもう一度五条先輩の美しい寝顔を見つめると、その真っ白で日焼け一つ知らぬ綺麗な頬の肌にそっと手を当てた。
「五条先輩…無事で良かった」