第26章 極秘任務
私は傑先輩の手を再び握りしめると、そのまま手を引くようにして室内へと入った。
さすが傑先輩とでも言おうか、女の子の部屋をキョロキョロ見渡すなんてことはしなくて、けれどその表情は少しばかり硬いようにも見える。
「傑先輩、もしかして緊張してる?」
「するよ、好きな子の部屋だし」
間髪入れずにそう答える傑先輩に思わず笑ってしまう。けれど傑先輩はどこか困ったように笑っていて、情けないところを見せたなんて思っているのかもしれない。
手慣れているように見えて、こういった姿を見せてくれるのがたまらなく嬉しい。
何でこんな事を思うのだろうか。付き合う前は先輩達が一年の時の傑先輩の女癖がどうとか、元彼女の話を五条先輩や硝子先輩から幾度と無く聞いた。その時はこんな気持ち無かったはずなのに。
それよりも、そんなにも女性とのあれこれがあったらしい傑先輩だけれど私は実際に傑先輩が誰かとお付き合いしていたところを見たことが一度もない。
傑先輩はずっと私が好きだったと言ってくれた。それが多分答えなのだと思う。
モテて仕方ないだろうに。それなのにも関わらず、傑先輩は私に一途にいてくれていたのだろう。そう考えるだけで胸の奥深くがむず痒く、そしてて満たされていく。