第26章 極秘任務
きっと、傑先輩と仲良くなる前ならばこんなこと気がつきもしなかっただろう。
笑顔を見せ、当たり前のように周りのことを考えてくれている傑先輩を見て、やっぱり傑先輩は凄いなぁなんてそんな風に思うばかりで。
この人の優しさも、強さも、大人っぽさも、きっと私は理解しきれなかったと思う。
その裏に潜むその脆い部分に。
けれど今は違う。傑先輩の些細な変化がとても気になって、無理していないかな、大丈夫かな、そんな風に思うのだ。
私なんかよりもはるかに人として頼りになる傑先輩にそんな事を思うなどおこがましいにもほどがあるが、けれど傑先輩が弱さを見せてくれるのなら、それは私の前であって欲しいとそう思うから。
だから私は傑先輩の頼りになる存在でありたい。そう思う。
ポタポタと瞳から涙が落ちてゆく。
「我慢強くならなくて良いんだよ、辛い時は辛いって言って良いんだよ。完璧でいる必要なんてない…それを私に教えてくれたのは傑先輩でしょう」
そうだ、私が何よりも辛い時、いつもそばにいてくれたのは傑先輩だった。
大丈夫だよと、全て吐き出して良いんだよと、そう声をかけ抱きしめてくれたのはいつだって傑先輩だった。