第3章 気付かないふり
思わずぽかーんとする私に、五条先輩は「な、問題ねぇだろ」とニヤリと笑って見せると、私のズボンの中へと手を差し込んだ。
さっきの不機嫌さは何処へ行ってしまったのか、いや…決して機嫌が直った訳ではなさそうだ。
その証拠に、私に触れる手つきは心底優しいのに、こちらを見下ろす視線はギラギラとまるで獲物を捉えた獣のように鋭い。
だけど、そんな表情すらも色っぽく見えてしまう五条先輩は、本当に凄まじいほどの美形なのだと思った。
まぁ五条先輩を良く知らない術師がこんな顔を見たら、泡を吹いて気絶するのは間違いないが。
私も確か初めて五条先輩を見た時は息が止まりそうになったのを覚えている。
キラキラと輝く白銀の髪に、碧く澄んだ瞳が綺麗だと思った。
まるで作り物のように繊細で美しい顔立ちは、それはそれは見入らないなど無理な話しで、きっと誰しもが彼に見惚れる事は間違いない。
まぁだけとその次に言われた五条先輩の「うっわ、今年の1年弱そー。足手まとい増やしてどーすんだよ」という言葉に、新入生として入学した私、七ちゃん、雄君は唖然としたのを今でも鮮明に覚えている。