第3章 気付かないふり
それが酷く滑稽な事だったとしても。それでも構わなかった。だって私は五条先輩が好きで、そしてたまらなく先輩のそばにいたかったから。
くちゅりといやらしい音を立てながら、唇が混じり合いそして銀の蜜が口の端から溢れ降りる。
それを五条先輩は慣れた手つきで掬い上げると、そのままその手を私のズボンへとかけた。
「…ちょっと…先輩!?」
いくら何でもそれはまずい。だってここは空き教室だ。いくら生徒が少ない学校とはいえ、そこそこの術師ならば呪力感知で誰がどこにいるかなどすぐに分かってしまう。
もし誰かが突然ここに来たら?もし誰かが私達を探しに来たら?そう思うと背筋が凍るような感覚になり慌てて五条先輩の腕を掴んだ。
「…んだよ、嫌なの?」
「嫌とかじゃなくて…誰か来るかも」
「そしたら直ぐに俺が分かる」
確かにそうだ。六眼を持った五条先輩は誰よりも呪力感知が得意なのだった。でも…
「こんなことしてたらさすがにバレるよ…」
「そうしたらトぶ」
いや、まさかその手もあったとは。